インビザラインは抜歯が必要?歯を抜かずに済むケースとは

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2025.07.25

インビザラインは抜歯が必要?歯を抜かずに済むケースとは

「インビザラインは抜歯が必要ですか?」「できれば歯を抜かずに矯正したいのですが…」矯正相談の場で、こうしたご質問をいただくことは珍しくありません。インビザラインは、目立ちにくく取り外し可能なマウスピース型矯正装置として幅広い年齢層に選ばれていますが、すべてのケースで“非抜歯”が対応できるわけではありません。

歯を抜くかどうかは、見た目だけでなく噛み合わせのバランスや口元の印象、将来的な歯や骨への負担など、さまざまな要素を踏まえて慎重に判断されます。一方で、インビザラインの特性を活かせば、抜歯を避けて治療できるケースも確かに存在します。

この記事では、インビザラインで抜歯が必要となるケースとそうでないケースの違いをはじめ、抜歯の有無による治療計画や仕上がりへの影響、代表的な適応症例などを歯科医師の視点から詳しく解説します。インビザラインを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

◼︎インビザラインで抜歯が必要なケース/不要なケースの違い

インビザラインによる矯正治療では、「歯を抜かずに済む」ことが大きな魅力として語られることがあります。実際、従来のワイヤー矯正と比べて、マウスピース矯正は歯の移動を少しずつコントロールできるため、非抜歯で治療できるケースも多くあります。しかし、すべての症例で歯を抜かずに治せるわけではないという点は、あらかじめご理解いただく必要があります。

抜歯が必要かどうかは、単に歯並びの見た目だけで判断されるものではなく、以下のような複合的な要素をもとに総合的に診断されます。

  • 顎の大きさと歯のサイズのバランス(=歯列弓のスペース)
  • 出っ歯や受け口など、前後的な噛み合わせのズレ
  • 顔貌(口元の突出感や輪郭への影響)
  • 奥歯や全体の噛み合わせの安定性
  • 年齢や顎骨の成長状態

たとえば、前歯の前突感が強く、なおかつ顎の骨格が小さい場合は、スペース不足の解消や審美的な仕上がりの観点から、抜歯が必要と判断されることがあります。

特に、第一小臼歯(前から4番目の歯)を左右1本ずつ抜歯し、前歯を後方へ移動させて口元を引き締める方法は、成人矯正でよく用いられる一般的な治療手段です。

一方で、歯列の乱れが比較的軽度であり、スペースの確保が歯の側方移動や歯列の拡大、IPR(歯と歯の間をわずかに削る処置)などで対応可能な場合には、抜歯せずに治療を進められることも十分にあります。

ここで重要なのは、「抜歯=悪い」「非抜歯=良い」といった捉え方をしないことです。

抜歯を伴う治療にはその目的があり、必要な抜歯を避けてしまうことで、結果的に歯並びや噛み合わせに無理が生じ、後戻りや再治療につながるリスクもあります。逆に、適切な非抜歯治療は身体への負担を最小限に抑えながら、美しい歯並びを実現することができます。

いずれにせよ、抜歯の有無は精密な診査とシミュレーションに基づき、歯科医師が慎重に判断すべき重要なポイントです。

◼︎抜歯の有無によって変わる治療期間・仕上がりの違い

インビザライン矯正では、抜歯の有無が治療期間や仕上がりに大きく関わります。一般的に、抜歯を伴う矯正は歯の移動量が多くなるため、非抜歯に比べて治療期間が長くなる傾向があります。非抜歯では1年〜1年半、抜歯症例では1年半〜2年半程度かかることもあります。一方、見た目の面では、抜歯により前歯を後方へ下げることで口元が引き締まり、横顔のバランスが整うこともあります。

非抜歯にこだわりすぎると、前歯が前方に押し出され、かえって口元が強調されてしまうこともあるため注意が必要です。また、噛み合わせの安定や顎関節への負担を考慮すると、適切なスペースを確保できる抜歯矯正の方が長期的に安定しやすいケースもあります。

「抜歯が必要かどうか」は、見た目だけでなく、機能性や将来的な安定性を踏まえた上で判断されるべき重要な要素です。非抜歯が可能なら理想的ですが、抜歯が最善となる場合もあります。

◼︎抜歯矯正が必要と診断される代表的な歯並びの例

インビザラインでは非抜歯での矯正も可能ですが、歯列と顎のスペースに大きな不調和がある場合や、噛み合わせにズレがある場合には、抜歯が必要と判断されることがあります。以下は代表的な症例です。

・叢生(そうせい:歯のデコボコ・八重歯)
歯の大きさに対して顎のスペースが不足している場合、歯が重なり合って並びきれず、前後にずれたり、外側に飛び出したりします。いわゆる「八重歯」や「乱ぐい歯」と呼ばれる状態がこれに該当します。

このようなケースでは、歯列を整えるためのスペース確保が必要不可欠であり、第一小臼歯の抜歯によって歯を並べる余地を確保することがよくあります。

・上顎前突(出っ歯)
上の前歯が前方に大きく突き出している状態で、唇が閉じにくかったり、口元が突出して見えることがあります。原因は歯の位置だけでなく、上顎の骨格が前方に出ている場合も含まれます。

このようなケースでは、前歯を後方へ大きく動かすためのスペースが必要となり、抜歯を行わないと治療が成立しない場合があります。

・下顎前突(受け口)
下の歯列が上の歯列より前に出ている状態で、噛み合わせにも大きなズレが生じます。

骨格的な問題が大きい場合は外科矯正を要することもありますが、軽度であれば上下顎の小臼歯を抜歯し、前後的なバランスを整える方法が選択されることがあります。

・上下顎前突(口元全体が出ている)
上顎・下顎のどちらの前歯も前方に傾斜し、全体的に口元が突出している状態です。口唇が閉じにくく、口を自然に閉じようとすると口周囲に緊張が生じる方も多く見られます。

このようなケースでは、上下の第一小臼歯を抜歯して前歯を後退させることで、口元の突出感を改善し、より自然で調和の取れた横顔に導くことが可能です。抜歯の有無は、見た目だけでなく、噛み合わせの安定性や顎関節への負担、治療後の後戻りのリスクなどを総合的に判断したうえで慎重に決定されるべきものです。

見た目だけでなく、長期的な口腔機能の安定性も重視する私たち歯科医師にとって、「必要な抜歯」は将来を見据えた大切な治療選択肢のひとつです。

◼︎非抜歯矯正のリスクとメリット

非抜歯矯正とは、歯を抜かずに歯列を整える治療法です。身体への負担が少なく、歯の本数も保てる点は大きなメリットであり、インビザラインは非抜歯に対応しやすいことから、多くの方に選ばれています。

軽度〜中等度の乱れであれば、歯列の拡大やIPRなどでスペースを確保し、抜歯せずに整えることも可能です。外科処置が不要なため、治療のハードルが下がるのも魅力です。ただし、スペースが明らかに不足しているケースで非抜歯にこだわると、歯列が前方に押し出されて口元が目立つ、噛み合わせが安定しないなどの不具合が生じることもあります。

実際には、見た目や噛み合わせに不満を感じて再治療を希望されるケースも見られます。非抜歯は必ずしも最良ではありません。「抜かないこと」ではなく、「きちんと噛めて美しく整うこと」が治療の本来の目的です。

患者様にとって本当に適した方法を選ぶために、歯科医師が状態を精密に診断し、最善の治療方針をご提案いたします。

◼︎インビザラインの診断〜治療計画の立て方について

インビザラインを成功させるには、治療前の診断と計画の精度が極めて重要です。マウスピース矯正は、あらかじめ設定されたシミュレーション通りに歯が動くことで、初めて効果を発揮します。

初診時には、レントゲンや口腔内写真、歯列スキャンを用いて、歯並びや骨格、噛み合わせの状態を詳細に確認します。この診査により、抜歯が必要か、IPRや歯列拡大で対応可能かなどの基本方針を判断します。そのうえで、3Dシミュレーションソフト「クリンチェック」を使い、歯の移動工程を設計。抜歯が必要な場合は、どのタイミングでどの歯を抜くか、歯の動かし方まで明確に計画します。

この工程設計の精度が、インビザライン治療の結果と予後の安定性を左右するカギとなります。インビザラインをご検討中の方は、まずは精密な診断を受け、長期的な視点から治療方針を立てることをおすすめします。

◼︎まとめ

インビザラインは、見た目の自然さや快適さから人気のある矯正治療法です。非抜歯で対応できるケースも多くありますが、すべての症例で歯を抜かずに済むわけではありません。最適な治療結果を得るためには、抜歯の有無を含めた精密な診断と綿密な治療計画が欠かせません。

「できれば歯は抜きたくない」「自分にとってベストな治療法を知りたい」という方は、ぜひ一度当院にご相談ください。当院では、丁寧なカウンセリングと専門的な診断をもとに、患者様一人ひとりに最適な矯正プランをご提案しています。お気軽にご相談いただける環境を整えて、皆様のご来院をお待ちしております。

当院のインビザライン矯正に関する詳細はこちら▼

https://www.shin-dental.jp/invisalign